update:2018/06/13
誰もが知る陶芸界の名家をご紹介していく企画の第3弾。
既に紹介した「酒井田家」「今泉家」と同じく佐賀県にありますが、向こうが色絵磁器なのに対し、こちらは陶器の唐津焼の名家「中里家」です。
歴代当主は中里太郎右衛門(なかざとたろうえもん)を名乗ります。現在は14代目。
唐津焼の歴史は、戦国時代に始まります。秀吉の朝鮮出兵の際、多くの陶工達を連れて帰ってきて、技術が日本に伝わったのです。
そして、唐津には多くの窯が作られ、唐津焼として領主が保護しました。そのうちの1つが中里家。江戸時代の間、藩の御用窯であった中里家は、献上品の唐津焼を焼く名家だったのです。
しかし、近代に入ると、他の藩窯と同様、唐津も保護から外れ、陶工たちにとっては厳しい時代となります。その中で中里家は窯を絶やさず伝統を守り、次々と名工を輩出し続けたのです。
その代表が、12代中里太郎右衛門です。唐津焼の人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定され、現在まで、その作品には高い評価を受けています。13代に当主を譲った後は無庵(むあん)を名乗りましたので、その名のほうが有名かもしれません。
そして、先代である13代もまた、父の跡を継ぎ、唐津焼の伝統を守りつつも、現代陶芸としての唐津焼の新しいカタチを模索し続けた、名高い現代陶芸家としても知られています。
これまでに紹介した有田の酒井田柿右衛門、さらには鍋島の今泉今右衞門は、いずれも当主として君臨する一人の名が圧倒的であり、まして今泉家は一子相伝ゆえ、他にこの名字を名乗る陶芸家はいません。
しかしながら、中里家は当主とは別に、同じく中里を名乗る数多くの陶芸家が存在し、人気作家もたくさんいます。
例えば、無庵の3男(当主は長男が襲名)である中里重利もまた、唐津焼の重鎮であった陶芸家。残念ながら3年前に亡くなられましたが、同じく無庵の5男である中里隆や、隆の息子である中里太亀(たき)や娘の中里花子も人気作家。
唐津焼における「中里」の名は一流ブランドのようでありながら、それぞれ作家の個性を生かした唐津焼を輩出する家系といえます。
現当主、14代中里太郎右衛門の作品に関しては、個人として「作品」は1点もので、「作品」ですから、簡単には手に入りません。展覧会などの機会に買うしかありませんが、中里太郎右衛門陶房の「器」は、職人たちによる数多く作られている「数もの」ですから、デパートや直営店などで購入することは可能です。
見に行きたいという場合は、唐津の窯元に行くのが一番。敷地内には工房ものの展示販売のスペースや、歴代の名品が展示されている陳列館、国指定史跡「唐人町御茶盌窯」があります。
ご興味がありましたら、ぜひ。
●中里太郎右衛門陶房 佐賀県唐津市町田3-6-29
https://www.nakazato-tarouemon.com/
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(2023年加筆修正)