update:2018/03/02
やきものにちょっとでも興味があったら、避けては通れないのが、やきもの特有の様々な名称・用語。これから詳しくなりたい!と思っても、ある程度は基本を押さえておかないと、美術館のちょっとした解説も、初心者向けと銘打った本を買っても、読破するのは意外としんどいものです。
ということで、しばらくは、基本の「き」を筆者なりに書いてみます。前回は「土器」でしたが、ここからが本番。今回のテーマは「陶器ことはじめ」です。
さて、「陶器」とは? 言葉としてはご存じでしょうか、使うことは少ない、あるいは全くないかもしれません。一般的には、食器棚にあるやきものの器は「陶器」と「磁器」の2種類です。歴史的に言うと、陶器が古く、ずっと後になって、磁器が誕生しました。つまり、磁器の方が技術的に高度なやきものということになります。
「磁器」については次回以降に書きたいと思いますが、ざっくりというと、白地で軽くて薄ければ、ほとんどが磁器。マイセンやセーヴル、ヘレンド、日本なら柿右衛門は磁器の有名ブランド(名窯)です。
逆に言うと、土器でも磁器でもないものが「陶器」と言ってもいいでしょうか。
こう言い切ってしまうと、かなり乱暴な区分法だと思います。しかし、「陶器」や「磁器」の概念は、国によっても差がありますし、広義や狭義でも変わってきます。例えば、ヨーロッパでは、ストーンウェアというのを、陶器と磁器の中間としていますが、日本は、その言葉そのものが輸入された言葉で、近年になって「炻器(せっき)」と翻訳されました。その結果、焼き方の種類によって、「炻器」と呼ぶ場合、広い意味ですべて「陶器」と呼ぶ場合も出てきてしまっています。
厳密なことは研究者にお任せして、あまり難しく考えないことにしませんか。そこでここでは、基本的にはすべて「陶器」とシンプルに統一することにします。今後、このブログが長く続いたあかつきには、いずれ「炻器」も登場させるとして、まずはこの言葉は頭の隅に置いておいてください。土器→陶器→磁器と進歩した、として次に進みます。そして、陶器を理解しやすくするために、磁器と比較しながら考えていきましょう。
では、「陶器」について、技術的な確認をしましょう。土器は、土で形をつくって、低温で焼いたため、脆く、水も吸い込んでしまう、ざらざらとした肌でしたが、それを進歩させ、より丈夫に水を吸収しにくくしたのが陶器です。大きく分けると二通りのやり方があります。
一つめは、形を作った後、しっかりと高温で焼いて、素材である土の粒子の隙間を埋める(焼くと縮む)方法。焼締陶(やきしめとう)と言い、岡山の備前焼、滋賀の信楽焼などは、現在までその方法が受け継がれている窯場の筆頭格です。
そして、もう一つは、形を作った後、調合した「くすり」を掛け、表面をくすりが覆っていて、水をはじき、強度を上げる方法。この「くすり」が釉薬(ゆうやく、うわぐすりとも言う)で、焼いたものは施釉陶(せゆうとう)と言い、佐賀県の唐津焼、山口県の萩焼などは有名だと思います。
共通して言える、いわゆる一般論としては、磁器は持つとひんやりして、カチャカチャと音が鳴りやすく、指ではじくとキンときれいな音がしますが、陶器は温かみがあって、ゴトゴトという感じの音。はじいても鈍い音がします。また、磁器は薄手で白地が基本ですが(上に色を付けている場合もありますが、白いので鮮やかに発色)、陶器は比較的厚みがあって、赤っぽかったり黒っぽかったり、土の地色が見える器です。釉薬の下に隠れている場合もありますが、多くは裏返して底を見ると、素地が覗いています。釉薬は、色が付いているものもあれば、透明、半透明(白濁しているものとか)など、様々な種類があり、さらには、「化粧」と言って、白や黒などの色の土を塗って、その上に釉薬(多くは透明)を掛けるという手法もあります。
さあ、「陶器」を駆け足で進めてみました。次回はもうちょっと踏み込んで、いろいろな陶器の話へと続けます。
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(2010年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)