update:2018/11/08
陶芸家には、文化勲章の他にも、肩書きとして「人間国宝(重要無形文化財保持者)」「伝統工芸士」そして「現代の名工」と国が決めるものだけでも3種類あるのをご存じですか?
近代以前、やきものを含めた伝統工芸品は、各藩の保護におかれたものも多く、中には藩の直営という窯までありました。それが明治に入り、藩がなくなると、多くの窯業地では経済的にも急速に厳しい状況におかれるようになりました。
一方、近代化によって西洋的な概念が流入し、それまでの「やきものの職人(陶工)」から、
個人の作家(陶芸家)として活動する人たちが登場してきました。
そこで、世界に発信する文化として美術家を支援したり、伝統工芸の保護すべきという気運も高まり、個人としての活動を評価・支援する制度が誕生しました。
それが、皆さんが良く耳にする、陶芸家の「肩書」です。
●帝室技藝員(ていしつぎげいいん)
明治23(1890)年に制定、戦後に廃止される(最後の認定があったのは昭和14(1944)年)。帝室(皇室)が、優れた美術家を保護し、終身の地位を与えた制度。皇室のための作品制作の他、万博などへの出品など、勅任待遇として年金の他に、制作費も与えられ、名誉と共に経済的な支援も得られた。
●文化勲章(ぶんかくんしょう)
昭和12(1937)年に制定。科学や芸術などの文化の発展に特に功績のあった人に対して授与される勲章。文部科学大臣が推薦し、審査を経て閣議で決定、受賞は毎年文化の日に天皇陛下から親受される。
●重要無形文化財保持者(通称:人間国宝)
昭和30(1955)年に制定。日本の文化財保護法における、無形文化財(音楽・舞踊・演劇その他の芸能、陶芸・染織・漆芸・金工その他の工芸技術で歴史的または芸術的価値の高いもの)の技術を高度に体得かつ精通している人に対して認定される。文部科学大臣が認定し、助成金も交付される。
●伝統工芸士
経済産業大臣指定の伝統的工芸品の製造に従事されている技術者のなかから、高度の技術・技法を保持する方を「伝統工芸士」として認定。
●現代の名工
卓越した技能を持ち、その道で第一人者と目されている技能者を表彰するもので、技能者の地位と技能水準の向上を図ることを目的とする。
これらの制度には、それぞれの目的があり、その評価基準によって選ばれた人たちです。
したがって、間違いなく作品や活動の評価が高い作家たちですが、優越をつけるためのものではありません。
「無冠の巨匠」と呼ばれるような、あまり表に出ることを嫌った陶芸家もいますしね。
……創作活動をする人たちにとって、このような肩書きは無意味に感じるかもしれません。しかしながら、人間国宝や文化勲章などは、近現代の陶芸を知る上での参考になるのは事実です。なにより重要なのは、ご自身の目で作品をたくさん見ていただくことだということは言うまでもありませんが。
ちなみにですが、人間国宝や文化勲章を決めるのは文化庁(文部科学省)、伝統工芸士は財団法人伝統的工芸品産業振興協会(経済産業省から補助金が入っている団体)、そして、現代の名工は厚生労働省。。。
人間国宝は文化・芸術の分野、伝統工芸士は産業の分野、現代の名工は労働(?)の分野??? いずれにしても、国の縦割り行政を感じてしまいますね。
さて、次回以降は、これらの「肩書」を持つ方々を紹介していく予定です。
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(2023年加筆修正)