その5「丹波」

update:2018/05/09

私的六好窯の第5回は丹波焼。主要地は、兵庫県篠山市今田町上立杭です。

日本六古窯の一つ、丹波焼は鎌倉時代初期には始まっており、現在まで続いている伝統的な窯場。現在は「丹波立杭焼」として伝統的工芸品に指定されています。その特徴ですが・・・技術的に多種多様であり、時代の推移と共にたどっていく必要があります。

丹波焼初期、古丹波と呼ばれるものは、主に中世期の壺や甕で、釉薬(ゆうやく;うわぐすり)を用いない焼締陶(やきしめとう)です。薪窯の中で灰が被り、それが窯の炎で自然な釉薬のように器に付着してできた、ビードロ色の自然釉が大きな壺の表面に流れているのが、大きな特徴です。

江戸時代に入ると、釉薬を用いるようになります。江戸時代初期の代表的な釉薬は赤土部(あかどべ)。鉄分を多く含んだ土を主成分としていて、焼き上がりは重厚感ある赤みがっているのが特徴。この赤土部、一時期量産されていたようなのですが、その後作られなくなり、現在では、当時の正確な製法が不明なのだそうです。多くの丹波焼の陶芸家・窯元が再現を試みており、現在の赤土部作品が多く発表されています。

江戸後期になると、さまざまな技法が取り入れられ、非常に多彩になります。絵付や、刻んだ文様、そして筒描き(イッチンともいいい、泥しょう(水でゆるめた土)で描くこと。現在は専用のスポイトがありますが、丹波では当時は竹筒などを使っていました)などなど。
そのころの丹波焼を知る上で重要な点に、地理的に酒で有名な灘(兵庫県)が近かったことがあります。結果として多くの徳利が作られました。江戸庶民は、酒を買うのに自分の徳利を抱えていきました。そのための大振りな徳利や、居酒屋から料亭まで様々なニーズに合わせて、多彩な意匠の徳利が作られていたのです。

さて、現在の丹波焼については、実は窯業地としては、これまでの4カ所に比べれば、やや元気ないところかもしれません。ですが、個人的には、その隠れ里みたいな風情が、旅情気分を誘って、実に楽しいところです。

さぁ、散策してみましょう。

篠山市にある上立杭は、歩いても1時間とかからないエリア内に窯元が集まっています。もっとも、その地にたどり着くには車が必要ですが、町中についたら、車を止めて歩きましょう。通りには窯元が並び、運が良ければ煙突から煙が見えるでしょう。里山に囲まれた、昔ながらというイメージが色濃く残った土地です。

中心部では、通りを外れて、少しだけ中に入ると、さらに古い街並みの風情が楽しめます。陶器神社があったり、歴史ある窯元があって、登窯も眺めることができます。

なかでも中心地に「丹波焼伝統工芸公園 立杭陶の里」があります。ショッピング、体験、鑑賞と一カ所で丹波焼の様々な楽しみがつまっていますので、初めての方はまずここからがおすすめ。ショッピングでは、各窯元が出店のように連なっている窯元横町がありますので、ここでチェックしてから、目的の窯元へ向かうのも一つの手段です。

また、「陶の里」の隣には、「兵庫陶芸美術館」があります。ここはやきものファンなら必見。良い特別展も多数企画していますので、常にチェックしてください。

ゆっくりウォーキング気分もいいですが、陶の里ではレンタサイクルも利用できますよ。
 

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(2011年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)