萩の七化け

update:2018/04/11

なんとなく聞いたことがある、あるいは知っておくと会話が弾む、愛陶家が口にしがちな言葉を集める企画の2回目。これまた、有名なのですが、改めてあげておきましょう。

「萩の七化け(はぎのななばけ)」です。

まず最初に申し上げますが、これは、萩焼が七段階に分けて「化けていく」という具体的な解説があるわけではありません。
もちろん、猫が年老いて「猫又(ねこまた)」になるという話でもなければ、100年を経て妖怪となった「付喪神(つくもがみ)ありません(笑)。

萩の七化けとは、萩焼の器(特に茶碗)は、使い手によって、器の景色が変わっていき、味が出てくる・・・という話です。
・・・実は、たいがいの器は、使い込めば「味」が出てくる、陶芸の世界で言うところの「育つ」ものなのですが、萩焼の場合は、それは特別に変化が目に見えて出てきて、使う楽しみのあるやきものである・・・ということです。

では、なぜ、そんなに変化がでるかというと、これはちょっと技術的・素材の化学的な話をしなければなりません。

簡単に言うと、萩焼に使われる土は、粗めで焼き上がりがざっくりとした感じの素地の上に、釉薬(ゆうやく;うわぐすり)を掛けて焼きます。
ざっくりとした土と釉薬とでは、焼いた時の縮み方に差が出てしまいますので、釉薬には細かなヒビである貫入(かんにゅう)がはいるのです。
このざっくりとした土と、貫入によって、器に入れた酒や茶が徐々に器に染み込んでいくのです。例えば、ツルツルの釉薬、細かな土で隙間なく焼き締められていれば、水分は入り込む要素がありません(それでも経年で入り込んでいきますが)。それが、萩焼と他のやきものとも違いなのです。

ですから、白い釉薬が掛かった萩焼は、お茶の色素が入り込んで、淡くピンク色に色づいてきたり、表情が変わっていくのです。いつも茶碗一杯にお茶を入れていれば、見込み(茶碗の内側全体)が色付いていくでしょうし、茶碗の三分の一ほどしかいつも淹れていなければ(※註)、その位置まで色がついて、見込みに新しい景色を出していくでしょう。
使い手の個性が出てくるのですね。
 

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(2023年加筆修正)
 
※註:いわゆる茶道で、抹茶を点てるときは、お茶碗いっぱいに入れることは、まずありません。茶碗の大きさや何人で飲むか…などによって、注ぐ量を調整しながら点てますが、それでも、半分以下というのが一般的ではないでしょうか。(2023年7月加筆)