update:2018/11/29
「用の美(ようのび)」という言葉は、愛陶家や陶芸家の間では、基本的な用語の一つと言って良いでしょう。でも、一般的には使わない特殊な言葉ですから、もちろん、初耳という方もいるでしょう。ちなみに、広辞苑などにも掲載されていない言葉のようです。
しかし、陶芸ファンなら知っておきたい言葉。
ここでは専門的なことを述べる場ではありませんので、さらっと説明をしましょう。
……というのも、厳密に、学術的に書こうと思うと、けっこう面倒な話があるからです。なぜなら、この言葉は、大正期の「民芸運動」の中から生まれた言葉だから。
そして、この民芸運動というのは、なかなか説明が難しい。。。
本格的に知りたいなら、まずは、提唱者である柳宗悦の著書『民藝とは何か』を読んで見てください。
ですので、ざっくりと。
民芸運動というのは、日常生活の中で使用される、身近な品々として、いわゆる美の対象とはならなかった、「民衆の工芸」に美を見出した運動のこと。その中で謳われているのが「用の美」です。簡単に言えば、“用いられるために作られ、用いられることで価値がある美しさ」を持つ日常品。
陶磁器で言えば、鑑賞用もありますが、これは使うためのものですから、使い勝手が良く、美しいということになりますね。それが、民芸品なのです。ですから、美しくても、使うことを考えられていない器はダメということですね。
……まぁ、こういう概念ですから、厳密な定義づけも難しい。用の美とは、精神性を謳っているという側面もあると思います。
ただ、自身が使っていて愉しい、心が満たされる、美を感じるというものを「用の美」と呼べば良いのではないでしょうか。
そして、その精神性で、器作りをする陶芸家がたくさんいらっしゃいますので、共鳴する作家がいれば、ぜひ使って楽しんでみてください。
(2023年加筆修正)