update:2018/02/13
日本は言葉が豊かな国だと思います。いろいろなものに呼び名を与えますので、名前が違えど、同じものだったり、違う名前でも同じもので、用途によって違いを分けていることも。ややこしい……。
やきもの」という言葉も、実はややこしい言葉ではないかと思います。
この言葉から何をイメージするものは?
広辞苑で一番に載っているのは、会席料理の中の「焼物」。魚や肉などを焼いた料理ですね。
しかし、今回のテーマである「やきもの」は、陶器・磁器・炻器・土器の総称です。
つまり、おおざっぱな言えば、様々な原料の土を形作って、様々な焼き方をしたものをすべて「やきもの」と呼ぶということです。さらに言えば、この言葉は平安の昔から、使われていたようです。
やきものは、古くは祭事用や埋葬用に作られ、文明が進化とともに日常生活に用いる様々な用途として生み出されていきました。さらに貴族階級なども現れてくると、権力の庇護の元に技術がどんどん発展していったのです。また、貿易により技術が伝播していきました。逆に、一部は失わせていき、現在では幻のやきものとなってしまったものもあります。
やきものの歴史は古く、考古学の視点から見ても、文化の発展を映し出す鏡の一つのようなものです。作られるものも様々、技術も様々、世界中で作られ、種類によって呼び名も様々です。
「やきもの」を買おうとは、あまり使わない表現ではないでしょうか。「やきもの」をさすものはいろいろありすぎるのです。茶碗を買いに行くとか、志野焼のぐい呑が欲しいとか、室山時代の古壺を探しているとか、目的語としてはもっと具体的な言葉がふさわしいのです。
ですから、最初に申し上げたように、「やきもの」とは良く聞く言葉であるにもかかわらず、あまり使われず、少しややこしい言葉と思うのです。
しかし、このサイトでは、「やきもの」という言葉を使います。幅広く、やきものについてアレコレと語りたいので、それがふさわしいと思うからです。
教科書でも研究論文でもありません。申し上げたとおり、やきものは幅が広い分、専門家も細分化されています。真剣に学ぼうと思うと、本当に奥が深く難しいのです。
ですから、これは筆者の知るところの一般論を個人的な視点と解釈を元に書くエッセイです。
肩肘を張らずに読んでいただき、これをきっかけに、やきものに興味を持っていただければうれしいです。
(2010年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)