update:2018/06/08
今日から新しい連載。「窯」について考えたいと思います。
まずは・・・なぜ「窯」を知ろうとするのか? ということから始めましょう。
いきなり、専門的な話題に飛ぶなと思われる方もいるかもしれません。しかし、「やきもの」は、炎が生み出すもの。それを少しでもコントロールしようとする窯の発展は、やきものの歴史そのものです。ある程度流れを押さえれば、日本における「やきもの文化」の継続性が見えてきて、断片的になりがちな知識が、流れを意識するとより面白くなるのではないかと思います。
それにしても、「窯」というのは、奥深くも興味深い対象です。しかしながら、実際に窯を使ってやきものを作ったことがない人間(筆者も含む)には、本質的な理解は不可能かもしれません。考古学者が窯跡を発掘して事実を積み重ねて推論し、検証していっても、一陶芸家の実体験による論証にはかなわないような気さえするのです。
例えば、この窯からこんな作品は焼けないよ! と言われてしまったら、考古学上の発見も吹き飛んでしまうような、説得力を感じてしまうのです。
さて、このブログは、研究者による専門的なものではありません。もちろん、筆者はアマチュア陶芸家ですらありません。ですから、できる限り客観的に、見聞きしたことを加えて、窯の理解を試みたいと思います。
さて、「窯」とは何か?
陶磁器における「窯」とは、窯内の温度や空気(酸素や炭素の量)、炎の流れを調整し、陶磁器を焼くための焼成炉です。古くは木を燃やし、やがて、石炭・石油・ガス・電気へと様々な燃料で発展し続けています。
窯の構造も様々です。最初は、原始的で、温度が下がらないような工夫が見られるだけものからはじまりました。温度が上がらなければ、丈夫なやきものができない。そこで、人々は温度を上げ、長時間焼けるように、どんどん様々な発明をしていったのです。
「窯」はただ焼いて丈夫な器体をつくるだけではありません。窯の発展=やきもの技術の発展でもあります。以前にこのブログで、土器→陶器→磁器と変遷を書きましたが、それに伴い、窯も変化してきました。例えば、中国における原始青磁(紀元前:現在呼ぶ青磁の原型であり、まだ透明感のある青色ではない)と、最盛期の青磁(宋代:透明感のある、ガラス質で覆われた青色)とでは、材料の違いだけではなく、窯の構造、そして焼き方にも違いがあるのです。さらには、庶民が広く使うための大量に焼くための窯、あるいは、ごく一部の上級階級あるいは皇帝のための、きわめて精度の高い窯、時間と燃料を最小限にするための効率的な窯などなど、需要に応じても、様々な形式の窯が発明されてきたのです。
そして、現在は、昔ながらの窯を求めたり、最新の技術を生かした窯だったり、たくさんの選択肢があります。
現在の陶芸家にとって、どのような窯を使うか、ということは、作家のアイデンティティの一つと言ってもいいかもしれませんね。
さて、やきものにおける「窯」の存在を改めて語ったところで、今回はここまで。
次回は、「窯」を使う話、そして、連載としては、歴史を追いながら窯の構造的な話へと進んでいく予定です。
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(2011年初出、転載・加筆修正、2023年加筆修正)