update:2018/05/16
日本には、工芸品だけでも、国宝が250件超。しかし、陶磁器の中でも「青磁」に限って言えば、3点しかありません。いずれも名品中の名品。
平安時代、貴族たちの間でも「唐渡り(からわたり)」の貴重品の中でも、「秘色(ひそく)」と呼ばれ、その美しい肌を珍重した青磁。
実は、あの美しさは、ガラス質の肌を太陽の光に当てて鑑賞すると、美しさが増すのですが、なかなか名品は、太陽の下で見ることはできませんね。
筆者は、学芸員の先生方や、陶芸の作家さんたちが持つ陶片などで、試したことがありますが、本当に美しいものです。
これからあげる3点は、美術館のガラスケースの中でしか鑑賞することはできませんが、でも、中国から渡り、数多くの愛好家の手を経て、現在まで完璧な形と色を残す名品は、肉眼で見なければ分からないものがあります。
『青磁鳳凰耳花生《万声》』
中国 南宋時代 龍泉窯
和泉市久保惣記念美術館
『飛青磁花生』
中国 南宋時代 龍泉窯
大阪市立東洋陶磁美術館
『青磁下蕪花生』
中国 南宋時代 龍泉窯
Hara Museum ARC 觀海庵
いずれも、中国の南宋時代、皇帝のために、完璧さを求めた最高級の青磁が焼かれた「龍泉窯(りゅうせんよう)」のもの。
ちなみに、一口に龍泉窯といっても、窯跡は現在でも300基以上あるとも言われていて、発掘が続いていますし、時代によっても、窯によっても、出来不出来は違います。
龍泉窯=名品、というのは間違いです。龍泉窯の“エリア”の中でも、端っこのほうの窯では、民衆用の粗い青磁も焼かれましたし、もっとも優れた窯では、官窯として、皇帝のための青磁を焼いていたのです。
時代も長いですからね。南宋が有名ですが、清の時代までずっと焼かれ続けていますから、一口に「龍泉窯」の特徴を語ることなど不可能なのです。
・・・某鑑定番組で某やきもの鑑定士が、「本物の龍泉窯の陶片を持ってきています。比べると偽物だとわかるでしょう?」と得意満面で言っていた場面を見たことがありますが、ちょっと、キツイですよね。いつの時代、どのあたりで発見された陶片だ?という感じで。。。1個の陶片だけで、真贋を説明するのは無理がありますよ。。。
話を戻して、この3点は、すばらしく名品。最高の南宋時代の、最上級の龍泉窯もの。
ぜひ、堪能してください。
(2023年加筆修正)
追記。。。
やきものの名品リストはこちらでまとめています。ぜひ参考に。
そして、より専門的に青磁を知りたいなら、この名著がオススメ。青磁の研究家として知られている、本物の専門家、東博の今井先生の著作です。
(しかし、いつの間にか、高騰している。。。本は絶版してからが真価がでます。新刊数ヶ月で消える本が圧倒的な中で、この希少本の凄さ。。。)
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そして、こちらは、現代の日本の作家の青磁事情を紹介する本。
上記と合わせると面白いですよ。
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