新刊情報:『ウズベキスタン陶芸紀行』

update:2019/08/20

今日取り上げる「新刊」は、気になっている人も多いジャンルでは?

中国やトルコの陶磁の歴史に興味があるなら、シルクロードの中継地点にして、重要な都市であるサマルカンドの陶磁にも当然興味がありますよね?そんな方に朗報です。

菊田悠 著  共同文化社刊(2019/7/31)
『ウズベキスタン陶芸紀行ーよみがえるシルクロードの窯元ー』

ウズベキスタン陶芸紀行-よみがえるシルクロードの窯元-

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著者は、中央アジア、特にウズベキスタンの社会を研究している学者さん。
ということで、本書は「社会学」という視点での、ウズベキスタン各地の窯元(工房)めぐりといった様相になっており、陶磁器ファンはもちろん、中央アジアに興味がある人に幅広く読んでいただきたい本となっています。

中央アジアの陶芸、もしくはウズベキスタンの陶芸について、日本人の我々はどういうイメージを持っているでしょうか?
ちなみに、日本の陶芸ファン、古陶磁好きの筆者個人のイメージは、「イスラームの色濃い、色鮮やかなタイルのような可愛い食器」。しかしながら、「陶芸(個人作家による創作)」というよりは、日用づかいの「用の美」あるいは観光客向けの「お土産品」のイメージが圧倒的に大きかったです。

ですから、この本を手に取ったとき、最初に驚いたのは、こんなに工房が数多くあり、それぞれ伝統技法を残そうという努力が進んでいるとは思わなかったということ。

考えてみれば、筆者は手工芸が好きで、ウズベキスタンのスザニ(刺しゅう)などは知っていました。そのような素晴らしい伝統工芸があるのですから、当然、陶芸だって、伝統工芸として残そうとされていることを考えてしかるべきだったのですね。

本書は、ウズベキスタンの陶芸の歴史、そして、サマルカンドを始め、各地の工房の取材が、カラーの写真とともに掲載されていて、見応え十分。

ウズベキスタンの古都サマルカンドは、アラビアンナイト(千一夜物語)にも登場する世界遺産の「青の都」。シルクロードの重要な拠点の一つであり、文化交流が盛んで多いに栄えた都市です。
そのウズベキスタンの陶芸を見るということは、東西の陶芸を知る上で非常に価値のあることであることは言うまでもないでしょう。

これまで、気になりつつも、知る機会のなかったウズベキスタンの陶芸。見ると、旅に生きたくてウズウズしてきます。
ぜひ、手に取ってみてください。